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北海道沖で超巨大地震!? 専門家が400年前の津波被害を検証

2019/04/13 23:11 ウェザーニュース

2017年12月、北海道沖の千島海溝でM(マグニチュード)9級の巨大地震の発生が切迫していると政府の地震調査委員会が公表しました。北海道沖で巨大地震が発生したらどんな被害が生じてしまうのでしょうか。

沿岸部を大津波が襲う

今後30年以内にM8.8以上の地震が発生する確率は40%
千島海溝では過去340〜380年間隔で巨大地震が起きていましたが、前回の地震発生からすでに約400年が経っています。そのため「切迫している」という表現になったのでしょう。地震調査員会によると、今後30年以内にM8.8以上の地震が発生する確率は40%です。

千島海溝で巨大地震が起こったら、北海道地方の沿岸部を大津波が襲うことが想定されます。

アイヌの言い伝えに津波被害

3年前に北海道各地を回り、過去の地震津波を検証した元東京大学地震研究所准教授の都司嘉宣(つじ よしのぶ)さんが語ります。

「北海道先住民のアイヌは文字を持たなかったため、過去の出来事は言い伝えで伝承してきました。津波は『オレプンペ』または『オハコベ』といい、潮を湧かす神が海水を一気に吸い上げ、そのあと吐き出すことで津波が起きると考えられています」

たとえば、白老(しらおい)のアイヌの伝説に、大昔、大津波で野も山も大波に襲われ、樽前山(たるまえやま)も頂上が少し残っただけで多くの人は死に絶えましたが、心の正しいアイヌは神のお告げで樽前山の頂上に逃げていたので助かったという話があるそうです。

伝承をもとに現地調査

そうした伝承をもとに、都司さんは津波が押し寄せたという土地を訪れ、標高を計測しました。すると、津波浸水高50m、60mというところもありました。

「伝承だけでは津波が発生した年代を特定できませんが、話の中に“チシャ(砦)”が出てくるものがあります。アイヌが砦を造るようになったのは16世紀以後なので、ある程度は時代がわかります」(都司さん)

慶長三陸津波の可能性

都司さんの現地調査の結果、16世紀以後の津波伝承がある場所と標高は上の地図のようになります。では、津波を発生させた地震の震源はどこでしょうか?都司さんが推定します。

「16世紀以後の巨大地震といえば、慶長三陸地震(1611年)が考えられます。青森県、岩手県、宮城県などで地震津波の被害記録が残されているので、震源は三陸沖の日本海溝と考えられていました」

「しかし、今の宮城県にあたる地域では地震発生から津波が到達するまで2〜4時間も経っていることや、北海道大学の平川一臣名誉教授が行った北海道内の津波堆積物調査などから、慶長三陸地震の震源は、北海道沖の千島海溝と考えられます」

津波を伝承してきた祈祷

アイヌの津波祈祷
「アイヌは津波祈祷(きとう)を行っていました。神様のお告げを受けた古老が津波の来襲を予告すると、集落の全員が集まって、浜の幣場(ぬさば)で津波を鎮める祈祷式を行うのです」(都司さん)

このアイヌの津波祈祷の絵は白老郵便局長の満岡伸一さんが、1931年に行われた時に描いたものです。

「津波が来るのに浜で祈祷をするのは自殺行為ですが、実際は津波を忘れずに伝承するための儀式だったのでしょう。そうして伝えられてきたアイヌの伝承を今に生かす必要があります」(都司さん)

どんな対策が必要なのか?

元東京大学地震研究所准教授 都司嘉宣さん
千島海溝で巨大地震が発生したら、どれほどの津波が北海道沿岸部を遡上するのか、アイヌの伝承から推定できました。では、どんな対策を行ったらいいのでしょうか。

「大津波が到達すると推定される地域にある住居、教育施設、医療機関、老人ホームなどは、インフラを整備した高台に移転する必要があります。膨大な費用がかかるでしょうが、人的被害は最小限に抑えられます。行政は早急に検討を開始するべきでしょう」(都司さん)

政府の地震調査委員会がいう「切迫している」とは、「待ったなし」ということでもあります。早急な北海道津波対策が望まれます。