最悪だった昨年よりひどい
「うちは創業100年を超えるけど、こんな不漁を経験したことがありません」と悲鳴をあげるのは、北海道・函館で昔ながらの木樽でイカの塩辛をつくり続けている小田島水産(創業1914年)の小田島隆社長です。
北海道のスルメイカの漁期は海域によって違いますが、例年6月から12月。不漁は5年前から始まりましたが、過去最悪だった昨年より今年のほうがひどいと言います。
「函館はイカのまちで、100軒以上の加工業者がいます。かつてない不漁で、函館市は加工組合に対して1億円の補助を決めましたが、廃業するところも出ています」と小田島社長。
「函館はイカのまちで、100軒以上の加工業者がいます。かつてない不漁で、函館市は加工組合に対して1億円の補助を決めましたが、廃業するところも出ています」と小田島社長。
サケも漁獲量は減少傾向
全国的に見ても、最盛期の1960年代にスルメイカは年間40〜60万tの水揚げを誇っていましたが、2010年には20万tを切り、昨年は6万8000tと最盛期の10分の1に。今年はそれを下回っているというのです。
「スルメイカの価格は上昇していますが、1杯200〜300gと小ぶりなものが多いので、皮肉なことに単価は下がっています」と語るのは、東京・築地の水産物大卸、中央魚類広報室長の山田雅之さん。
「スルメイカと同じように漁獲量が著しく減少しているのがサケです。サケは、人工的に孵化させた稚魚を川に放流し、3〜4年後に戻ってきたものを捕獲するのですが、通常は2〜4%前後の回帰率が下がっているのです」と山田さんは続けます。
「スルメイカと同じように漁獲量が著しく減少しているのがサケです。サケは、人工的に孵化させた稚魚を川に放流し、3〜4年後に戻ってきたものを捕獲するのですが、通常は2〜4%前後の回帰率が下がっているのです」と山田さんは続けます。
漁獲量減少の原因は?
スルメイカとサケの漁獲量はなぜ減ったのでしょうか。水産庁で漁業政策を長年担当してきた東京財団上席研究員の小松正之さんが語ります。
「地球温暖化の影響もあるでしょうが、海水温が上がっても魚は水温の低いところを回遊するから漁場が変わるだけで済む。しかし、漁獲量全般が減少傾向にあるのをみると、もっと大きな変化が海に起こっている可能性があります」
「たとえば、北海道や東北の河川や港をコンクリートで固めると、海の微生物が減少します。そこに人工孵化したサケの稚魚を放流しても栄養がとれずに生存率が下がり、回帰率も下がります。スルメイカは東シナ海で発生しますが、中国が長江に巨大な三峡ダムをつくり、長江の護岸工事を進めるなどで東シナ海の生態系が変わり、魚には厳しい環境になったとされています」
「地球温暖化の影響もあるでしょうが、海水温が上がっても魚は水温の低いところを回遊するから漁場が変わるだけで済む。しかし、漁獲量全般が減少傾向にあるのをみると、もっと大きな変化が海に起こっている可能性があります」
「たとえば、北海道や東北の河川や港をコンクリートで固めると、海の微生物が減少します。そこに人工孵化したサケの稚魚を放流しても栄養がとれずに生存率が下がり、回帰率も下がります。スルメイカは東シナ海で発生しますが、中国が長江に巨大な三峡ダムをつくり、長江の護岸工事を進めるなどで東シナ海の生態系が変わり、魚には厳しい環境になったとされています」
海の環境変化が食卓を直撃する
小松さんが続ける。「陸上の森や耕作地の栄養が川に流れ込み、海を潤すことでプランクトンが育ち、魚を繁殖させるのです。そうした生態系が崩れると、海の栄養は乏しくなり、魚も減少させざるを得なくなるのです」
年末年始に食べる機会が多いイカやサケなど海の幸。海の環境変化の波は食卓にも押し寄せているのです。
年末年始に食べる機会が多いイカやサケなど海の幸。海の環境変化の波は食卓にも押し寄せているのです。