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知っておきたい!都市火災から身を守る鉄則

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2017/03/12 17:12 ウェザーニュース

昨年12月の新潟県糸魚川(いといがわ)市の住宅街、今年2月の埼玉県三芳町(みよしまち)の物流倉庫など、この冬は大規模火災が目立った。私たちは火事に巻き込まれたら、どうすればいいのか。
※こちらの記事はウェザーニュースの月刊デジタルマガジン「月刊SORA」に掲載中の記事を一部編集してご紹介しています。

知られざる消防のお仕事

◆消防署の中はどうなっているの?
「火事と喧嘩は江戸の華」と言われるほど、江戸(今の東京)は火事が多かった。ここでいう「火事」は火消しの華々しい働きぶりを指しているとされるが、現代の火消しともいえる消防士は日頃どんな仕事をしているのか、東京消防庁を取材した。

広報課の小川紘明(ひろあき)さんによると、消防署には、「総務」「警防」「予防」の3つの課があり、「毎日勤務」と「1部」「2部」「3部」が24時間勤務を輪番でこなす「交替制勤務」に分かれている。

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広報課の小川紘明さん
「交替制勤務の場合、当番日は8時30分の大交替で勤務がスタート。機材の点検・訓練・体力養成のほかに、総務・警防・予防の担当事務をこなし、22時20分に仮眠、翌日6時に起床というスケジュールです」

「もちろん119番の通報で出場指令が出ると、通常は防火服を着て、約1分以内にポンプ車、はしご車、救急車などが出場し、消火・救助・救急活動を行います。そして鎮火後は火災原因調査を行います」(小川さん)

◆火災被害を予防・軽減する

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タンクローリーの消火設備を点検する
消防署の毎日勤務で注目したいのが予防課だ。ここは事業所の防火・防災管理指導、火災予防査察、建物の消防検査、危険物施設の許可や審査などを行っている。

「事業所で定期的に避難訓練や消火訓練をしているか、非常階段を物置代わりにして避難を妨げていないか、一定規模の建物が自動火災報知設備やスプリンクラーなどの消防用設備を備えているかといった、火災被害を予防したり軽減するための業務を行っています」(小川さん)

◆世界最大の消防機関
こうした消防署が都内に81署あり、さらに小規模な消防出張所が208所、消防分署が3署ある。その上に第1から第10まで10の消防方面本部があり、東京消防庁本部が全体を統括するのが東京消防庁の体制だ。
消防職員数は約1万8000人。これは全米最大のニューヨーク市消防局の約1万1000人を上回り、自治体の消防では世界最大の規模だという。

難敵は「高層」と「木密」

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はしご車が届かない高層火災も
◆はしご車が届かない高層火災は?
東京など大都市ならではの課題の一つが高層建築の火災だ。はしご車が届く高さは30〜45mほど。はしご車が届かない高層建築の火災はどうするのか。

実は7階建て以上の建物は地上に「連結送水管」が設置され、ポンプ車のホースをそこに連結すると、建物の各階にある消火栓に水を送り込めるようになっている。消防隊は火災が発生しているフロアあるいは直下のフロアに進入し、消火活動を行うのだ。
▼連結送水管に消火用水を注入する

なお、ポンプ車が水圧をかけても十分な放水ができない高層建築は、「ブースターポンプ」といって、高層階に水を送る設備が義務付けられているから、消火ができないという心配はいらない。

◆怖いのは「逃げ遅れ」
小川さんが語る。「高層建築には、オフィス棟も住宅棟も防災センターがあり、自動火災報知設備や非常用エレベーターなどの設備があるので消火活動は思うほど困難ではありません。しかし、防災センターでも誰がどこにいるのかはわかりませんから、消防としては逃げ遅れた人がいないかの確認が欠かせません」

やはり、大都市の高層建築では「逃げ遅れ」が最も怖いということだ。

◆「木密」は火災予防と初期消火
東京のもう一つの課題が木造住宅密集地域、いわゆる「木密(もくみつ)」の火災だ。震災対策課の近藤謙太さんが語る。
「東京消防庁では、都内全域を5200の町丁目や250mごとのメッシュに分け、出火の危険性や延焼の危険性の評価を行っています。これは地域ごとの建物の用途や構造の割合による火災リスクの評価です」

「東京都都市整備局では、これらの火災リスクなどを基に、地震に関する地域危険度測定調査を行っており、平成25年に発表された第7回調査の結果によると、最も火災の危険性が高い火災危険度5の地域は足立区や荒川区など84地域ありました。そうした地域にある消防署では、積極的に防火防災訓練を推進しており、町会などを中心として定期的に訓練が実施されています」

◆「まちかど防災訓練」

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防災安全課の楠木裕也さんが補足する。「木密地域を中心に“まちかど防災訓練”と銘打った防災訓練を実施しています。町会などの防災倉庫にある身近な消火用資器材を使って、自分たちで初期消火ができるように訓練をしています」
まずは初期消火で延焼を防ごうというのだ。木密地域はポンプ車が入れないような細い道が多く、1本20mのホースを何本もつないで消火活動を行わなければならない所も多い。消防隊による本格的な消火活動が始まるまでの間、住民の初期消火活動が延焼を防ぐうえで重要となるのだ。

火事にあったらどうする?

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◆通報と消火の義務
私たちが火災に巻き込まれたらどうすればいいのか。前出の小川さんが、消防法に照らして語る。「火災を発見した人には通報義務、建物関係者には消火義務が法律で定められています。自宅の火災などは消火義務を果たしていただきたいのですが、消火器で消せるのは天井に炎が達するまで。身の危険を感じたら逃げてください」

火災で危険なのは煙だ。吸い込めば一酸化炭素中毒で気を失ったり、避難するときの視界がさえぎられる。避難の鉄則は煙に巻き込まれないよう身を低くして口にハンカチを当て、手で壁を触りながら出口に向かうこと。

◆人混み火災は「お・か・し・も・ち」
▼小学校で消火器を使った消火訓練

小学校の避難訓練では児童たちに「おかしもち」という言葉が教えられると前出の楠木さんが語る。
「火災で避難するとき、押さない、駆けない、喋らない、戻らない、(火元に)近づかない──の頭文字です。大型商業施設などで火事に巻き込まれたときはパニックになりやすいので、覚えておいてください」

◆火事が起こりやすい気象条件
東京消防庁が火災警報を発令するのは、次の3つのパターンが予想されるときだ。
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◎実効湿度50%以下、最小湿度25%以下
◎平均風速13m/s以上
◎実効湿度60%以下、最小湿度30%以下、平均風速10m/s以上
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実効湿度とは過去数日間の湿度から木材の乾燥度を示す数値で、数式で算出するが、要するにひどく乾燥していたり、強い風が吹くと予想されるときに火災警報が発令される。
「火災警報が出ると消防署は屋外訓練や車両出向を中止し、ホースを増強します」(小川さん)

◆一番の出火原因は放火

2大出火原因と言われるのが「放火」(2016年は877件)と「たばこ」(同582件)だ。合わせて火災件数の約3分の1を占める。
放火対策には可燃物を屋外に放置しない、車や自転車のカバーは難燃性のものにする。たばこについては寝床で吸わない、必ず水を入れた灰皿で消すなどの対策で減らせるはずだ。


怖いものの代表は「地震、雷、火事、おやじ」という。おやじはともかく、地震と雷は避けようがないが、火事は日頃の注意を怠らなければ防げる。ぜひ火災予防を心がけていただきたい。
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