災害時の水不足解決? 能登でも使われた、断水時も水を使い続けられる水循環システム
地球温暖化の影響とみられる集中豪雨や大型台風による災害が近年多発する中、地震に続いて洪水に見舞われた能登半島では、水道管の破損による断水が広域にわたり長期化。住民の生活に多大な影響を与えました。気候変動は渇水など「水インフラ」保全の妨げとなる事象ももたらしています。
被災地の水不足解消に向け、国土交通省の委託を受けてWOTA株式会社(東京都中央区)などが共同で「災害時における応急浄水と応急給水の一体的運用に関する研究」を進めました。
WOTAは同研究で得られた知見をもとに、応急給水時に水循環シャワー「WOTA BOX」や水循環型手洗いスタンド「WOSH」を導入した場合の効果を独自に試算し、「入浴・手洗いに必要な生活用水量を9割以上削減できる」との結果をまとめ、今年9月30日に発表しました。
能登の被災地で活躍した水循環システムとは、どのようなものなのでしょうか。その仕組みや効果などについて、見ていきましょう。
被災地の水不足解消に向け、国土交通省の委託を受けてWOTA株式会社(東京都中央区)などが共同で「災害時における応急浄水と応急給水の一体的運用に関する研究」を進めました。
WOTAは同研究で得られた知見をもとに、応急給水時に水循環シャワー「WOTA BOX」や水循環型手洗いスタンド「WOSH」を導入した場合の効果を独自に試算し、「入浴・手洗いに必要な生活用水量を9割以上削減できる」との結果をまとめ、今年9月30日に発表しました。
能登の被災地で活躍した水循環システムとは、どのようなものなのでしょうか。その仕組みや効果などについて、見ていきましょう。
能登半島地震の避難所や病院で活躍
WOTAの報告書では、目標フェーズ1(生命の確保)/目標フェーズ2(衛生環境の確保)/目標フェーズ3(健全な生活環境の確保)といったように、目標フェーズ別の一人あたり給水需要量を試算。
それによると、飲用水3Lに加え、3日に1回のシャワーや仮設トイレなど「目標フェーズ2」に必要な生活用水が計23L、毎日のシャワーと水洗式仮設トイレなどのフェーズ3には計60Lが必要とされています。
従来の応急給水手法では、フェーズ2まで発災から142日(約5ヵ月)、フェーズ3まで218日(約7ヵ月)かかると予測されました。そこで避難所67ヵ所に加えて、病院や介護施設など68ヵ所にWOTAの水循環システムが設置され、入浴や手洗いに活用されることになったのです。
それによると、飲用水3Lに加え、3日に1回のシャワーや仮設トイレなど「目標フェーズ2」に必要な生活用水が計23L、毎日のシャワーと水洗式仮設トイレなどのフェーズ3には計60Lが必要とされています。
従来の応急給水手法では、フェーズ2まで発災から142日(約5ヵ月)、フェーズ3まで218日(約7ヵ月)かかると予測されました。そこで避難所67ヵ所に加えて、病院や介護施設など68ヵ所にWOTAの水循環システムが設置され、入浴や手洗いに活用されることになったのです。
水循環システム「WOTA」の仕組み
「WOTA BOX」は一度使った水を、活性炭とRO(逆浸透)膜を収めた計6基のフィルターに通して濾過(ろか)し、不純物や細菌、ウイルスを除去。深紫外線の照射・塩素系消毒剤の投入をすることで、公衆浴場の水質基準に準拠した水を提供します。排水の98%以上をその場で再生、循環(繰り返し)利用することを可能にするシステムです。
また、複数のセンサーを組み合わせた水処理自律制御システムが内部に搭載されて水質やシステムを監視・制御しており、トラブルの発生やメンテナンスの必要が生じれば現場はもとより、遠隔操作場所へもインターネットを通じて即時通知されます。
通常2人がシャワーを浴びる水量(100L)で100回の使用が可能です。付属の簡易シャワーキットは、2人で15分程度で設営できます。
水循環型手洗いスタンド「WOSH」も排水の98%以上を再生して循環利用することができ、20Lの水で連続500回以上の手洗いが可能といいます。
また、複数のセンサーを組み合わせた水処理自律制御システムが内部に搭載されて水質やシステムを監視・制御しており、トラブルの発生やメンテナンスの必要が生じれば現場はもとより、遠隔操作場所へもインターネットを通じて即時通知されます。
通常2人がシャワーを浴びる水量(100L)で100回の使用が可能です。付属の簡易シャワーキットは、2人で15分程度で設営できます。
水循環型手洗いスタンド「WOSH」も排水の98%以上を再生して循環利用することができ、20Lの水で連続500回以上の手洗いが可能といいます。
入浴・手洗いに必要な水量を9割以上削減
今年9月30日に発表された、WOTAのレポート「大規模災害時における応急給水を再定義する」の試算によると、珠洲市での避難者約8700人のフェーズ2対応に必要な給水需要量226m3(立方メートル)に対し、従来の応急給水手法による実績供給量はわずか63m3にとどまります。
ところが、仮に可搬式浄水装置と手洗い・入浴の水循環システムを十分(手洗い用250人に1台の61台、シャワー50人に1台の232台換算)に設置できた場合、フェーズ2に必要な給水需要量を満たすための実質の必要水量を、発災後10日目の段階で充足。つまり、確保するまでに必要な日数が、132日間(約4ヵ月半)短縮できると確認されたのです。
水循環システムによって充当された水量は計136m3で、手洗いと入浴に必要な需要量の98%がまかなわれることになります。応急給水手法と可搬式浄水装置1台分27m3を合わせた「実質的な必要水量」は、水循環システム導入前比約40%に抑えられます。
ところが、仮に可搬式浄水装置と手洗い・入浴の水循環システムを十分(手洗い用250人に1台の61台、シャワー50人に1台の232台換算)に設置できた場合、フェーズ2に必要な給水需要量を満たすための実質の必要水量を、発災後10日目の段階で充足。つまり、確保するまでに必要な日数が、132日間(約4ヵ月半)短縮できると確認されたのです。
水循環システムによって充当された水量は計136m3で、手洗いと入浴に必要な需要量の98%がまかなわれることになります。応急給水手法と可搬式浄水装置1台分27m3を合わせた「実質的な必要水量」は、水循環システム導入前比約40%に抑えられます。
温暖化で引き起こされる水インフラ問題の対策にも
A-PLATは「気候変動による豪雨や強い台風の増加、渇水の増加、水温上昇、海面水位の上昇などにより、水道システムに対し水量、水質、水道施設へ影響を及ぼす可能性が極めて高い」とみています。
その適応策としてWOTAの開発するシステムなどを活用し、雨水や下水処理水の再生水を生活用水として利用することに期待がかけられています。
WOTAは能登半島地震・豪雨のほか、2019年10月に発生した台風19号による千曲川の氾濫(はんらん)の際にも活用されました。長野市内の避難所6ヵ所に計14台が設置され、入浴回数は翌月末までの46日間で延べ4000回以上に達したそうです。
その適応策としてWOTAの開発するシステムなどを活用し、雨水や下水処理水の再生水を生活用水として利用することに期待がかけられています。
WOTAは能登半島地震・豪雨のほか、2019年10月に発生した台風19号による千曲川の氾濫(はんらん)の際にも活用されました。長野市内の避難所6ヵ所に計14台が設置され、入浴回数は翌月末までの46日間で延べ4000回以上に達したそうです。
2022年の台風15号では、静岡県内各所の断水エリアでWOTA による入浴支援活動も実施されました。
災害時の避難所での十分な生活用水供給は、安全衛生対策や「災害水ストレス」解消に加え、ジェンダー課題の解消にも必要不可欠とされています。
さらに政府の「骨太方針2025」にも、老朽化に伴う上下水道管の破損や漏水事故増加など、水インフラ問題対策のひとつとして「上下水道の分散型システムの早期実用化」が明記されるなど、WOTAへの期待が高まっています。
ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、みなさんと一緒に地球の未来を考えていきます。
特集 ウェザーニュースと考える地球の未来
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災害時の避難所での十分な生活用水供給は、安全衛生対策や「災害水ストレス」解消に加え、ジェンダー課題の解消にも必要不可欠とされています。
さらに政府の「骨太方針2025」にも、老朽化に伴う上下水道管の破損や漏水事故増加など、水インフラ問題対策のひとつとして「上下水道の分散型システムの早期実用化」が明記されるなど、WOTAへの期待が高まっています。
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