今年は春から本州各地でツキノワグマの出没が続き、5月下旬には秋田県で「人食いグマ」も登場。冬眠を前に食いだめする秋には、クマの好物のドングリの不作が予想され、山から下りてくるクマとの遭遇が懸念されている。
背景にクマの分布域の拡大
春から各地で出没が相次ぐ
日本に生息するクマには、北海道のヒグマ(推定3000〜4000頭)、本州と四国のツキノワグマ(推定1万3000〜3万頭)がいる。そのうちツキノワグマの出没が春から相次いでいるのだ。
たとえば、秋田県では8月15日までの目撃情報は722件で、昨年1年間の325件を超えた。岡山県でも昨年の2倍以上の出没が確認されている。
東京都の奥多摩でも38件(8月9日現在)、神奈川県でも相模原市や伊勢原市などで42件(8月2日現在)目撃されるなど首都圏でもクマが出没しているのだ。
元気なクマが増えた?
今年はなぜクマの出没が多いのか? クマの生態に詳しい東京農業大学教授(森林生態学)の山崎晃司さんが推測する。
「昨年の秋はドングリなど堅果類(けんかるい)が豊作で子グマが増えたからという人がいますが、今年の目撃情報では母グマが連れている子グマは1歳半前後なので、それは当たりません。仮説ですが、今年は木の実などの食料が豊富でクマの栄養状態が良く、体調が良くて遠出するクマが増えていることが考えられます」
クマの分布域が拡大中
山崎さんが続ける。「クマの目撃情報が増えた背景には、クマの分布域が拡大していることがあります。環境省の調査(1978年・2003年)と日本クマネットワークの調査(2013年)をみると、北海道のヒグマ、本州と四国のツキノワグマとも全国的に分布周縁部が広がっています。とくに東海・近畿・中国の西日本で分布拡大が顕著でした」
その理由として、里山の利用形態の変化があると山崎さんは指摘する。里山は森林と居住地の境界線。これまでクマはその手前の森に暮らしていたが、里山が荒れて耕作放棄地が増えると灌木(かんぼく)や草が生い茂り、クマの生息域が拡大する。その結果、居住地近くに出没するクマの目撃情報も増えるというわけだ。
今年の秋、ドングリが不作になると…
クマは11月上旬〜12月下旬に冬眠に入ると、およそ4ヵ月間を飲まず食わずで過ごす。そのため秋には食いだめして体重を20〜40%増やす必要がある。ところが、今年はクマの秋の主食、ドングリなど堅果類の不作が予想されている。堅果類は豊作年と不作年を繰り返すが、今年は不作年に当たるのだ。
「9月から冬眠に備えてクマの摂食行動が盛んになります。いつも暮らしている山に食料がないと、果樹園や畑まで下りてきて食べたり、人の居住地で残飯や飼い犬用のドッグフードを漁ったりして、人とのトラブルが起きることが懸念されているのです」(山崎さん)
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