総力特集

貯水率この25年で最低に!!
首都圏の水、今後どうなる!?

平年より水位が低い薗原ダム
平年より水位が低い薗原ダム
首都圏の水がめ、利根川水系のダムの貯水量が低下している。すでに10%の取水制限が行われているが、このままでは20%、30%と取水制限が強化されることも。するとどんなことが起こるのか? 私たちにできる節水生活とは──

貯水率、この25年で最低に

10%の取水制限実施

6月16日、利根川水系において10%の取水制限がスタートした。利根川から取水している各地の水道局などが取水量を減らすのだ。
10%の取水制限では、通常使用していない予備の水源に切りかえたり、水のくみ上げ時間を調整したりと、縁の下での苦労、工夫がなされながらも、私たちの日常生活や企業の活動に大きな影響はない。10%の取水制限は、いわば「水事情が厳しいので節水に協力してくださいね」という予告のようなものだ。

なぜ水がめはピンチになったのか?

利根川水系には8つのダムがある。8つのダム合計の有効容量は約4億6000万tなのだが、6月26日現在は約1億8000万t。貯水率は38%で、平年の約半分だ。
河川保全管理官の酒井義尚さん

河川保全管理官の酒井義尚さん

「その理由は2つあります」と語るのは、国土交通省関東地方整備局の河川保全管理官、酒井義尚さんだ。「1つはこの冬の雪が少なかったことです。例年なら雪解け水が5月頃までダムに水を供給しますが、今年は4月中に途絶えて量も少なかったのです(尾瀬沼の消雪は平年なら5月23日だが、今年は4月28日だった)」
この冬は関東北部の降雪量が平年の半分程度だった。雪不足はスキー場がオープンできないなど冬だけの問題ではない。雪解け水はダムを給水するため、雪不足は夏の水不足につながるのだ。
冬の雪が少なかった(群馬県みなかみ町)

冬の雪が少なかった(群馬県みなかみ町)

梅雨前線が上がってこない

酒井さんが続ける。「首都圏の水がめがピンチになったもう1つの理由は、5月の北関東の雨量が少なかったこと。平年の約半分しかなかったのです」
補足すると、2013年と15年も5月の降水量は平年の半分だった。だが、両年とも6〜7月の梅雨期の降水量が平年の1.5〜2倍だったので危機は回避できた。
今年の梅雨期は、九州・中国地方で水害が出るほど雨が降っているのに、関東地方の雨量が少ないのは、6月末時点で梅雨前線が南に下がって、なかなか北に上がってこないからだ。冬の雪不足と5月以降の小雨。複数の要因が重なると大きな危機を招くのだ。

毎日1000トンを放流

利根川水系の水を使うのは水道だけではない。用途別にみると、農業用水80%、水道用水13%、工業用水その他が7%だ。圧倒的に農業は水需要が旺盛なのだ。
奈良俣ダム・平均的な年の状況 94%

奈良俣ダム・平均的な年の状況 94%

2016年6月27日 48%

2016年6月27日 48%

利根川水系の8つのダムは5月の初旬に約4億2000万tの貯水量があった。しかし、田植えの時期なのに降水量が少なく、雪解け水も尽きたため利根川の流量が減り、「8ダムから1日に最大1136万tを放流しなくてはなりませんでした。その結果、6月中旬には1億7000万tまで低下し、10%の取水制限を実施せざるを得なかったのです」(酒井さん)