【連載】二宮清純の「スポーツと気象」(3)

“史上最強ボクサー”の落日

文:二宮清純
リングに横たわるジャック・ジョンソン(写真:Hulton Archive)
リングに横たわるジャック・ジョンソン
(写真:Hulton Archive)
雨や風などの天候から偶然生まれた名場面をスポーツジャーナリスト・二宮清純氏が解説するスポーツノンフィクション。第3回目は史上初めて黒人で世界ヘビー級チャンピオンとなったボクサー。そのタイトルマッチで残された大いなる謎とは。

黒人初の世界ヘビー級王者

黒人初のメジャーリーガーは誰か?
米国人ではなくても、多くの者がすぐに答えられるはずだ。
1947年から56年にかけてブルックリン・ドジャースで活躍したジャッキー・ロビンソンである。
では、ボクシングにおける黒人初の世界ヘビー級チャンピオンは誰か?
これはボクシングファンでも、すぐには浮かんでこないかもしれない。
1908年12月から1915年4月にかけて、6年以上も王座を守り続けたジャック・ジョンソンである。
ジョンソンの波乱万丈の生涯については1970年にアメリカで制作された「史上最強のボクサー ジャック・ジョンソン」というドキュメンタリー・フィルムに詳しい。
ジョンソンは1897年にプロデビューを果たすが、当時、黒人選手が白人選手の持つ王座に挑むことはできなかった。
逃げ回るヘビー級王者のトミー・バーンズを追いかけ、やっとの思いで王座挑戦にこぎつけたのは1908年12月のことである。
場所はオーストラリアのシドニー。積年の恨みを晴らすかのようにジョンソンはバーンズを滅多打ちにし、14ラウンドTKO(テクニカルノックアウト)で白人王者を仕留めてみせた。
二宮清純(スポーツジャーナリスト)
二宮清純(スポーツジャーナリスト)

1960年、愛媛県生まれ。スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック、サッカーW杯、メジャーリーグ、ボクシング世界戦など国内外で幅広い取材活動を展開。『スポーツ名勝負物語』(講談社現代新書)『プロ野球の職人たち』(光文社新書)『最強の広島カープ論』(廣済堂新書)など著書多数。