SORAセレクション(1)

食虫植物の人気ランキング10

トンボを捕らえたモウセンゴケ
トンボを捕らえたモウセンゴケ
世界中で500種類も確認されている食虫植物。虫を巧みなトラップによって捕らえ、消化して自分の養分としてしまう植物界の“強者”たちの人気ランキングを紹介します。
奇抜で個性的な見た目や虫を消化吸収する特殊な生態など、多くの謎に包まれている食虫植物。虫を捕らえる動きは一見グロテスクなようでもあるが、そこにかわいさを感じる人も多いようで、ユニークな見た目や生態に魅せられた愛好家もここ数年でだいぶ増えています。
熱帯のジャングルに生育しているイメージが強い食虫植物ですが、実際は寒冷地から熱帯雨林、高山から低湿地や池と世界中に分布していて、日本に自生している種もたくさんあります。養分が少ない場所に生えているので、不足しがちな養分を補うために虫を捕らえるのです。
虫の捕らえ方は「落とし穴式」「粘着式」「閉じ込み式」「吸い込み式」など多彩で、いずれも捕虫葉(ほちゅうよう)と呼ばれる虫を捕らえるように発達した葉がトラップとなっています。
今回は多くの食虫植物を取り扱う日本最大の食虫植物販売(通販)・輸入代行業者、Y's Exotics(山田食虫植物農園)さんの2015年度の食虫植物販売数をもとに、人気ランキングを作りました。

1位
ウツボカズラ

食虫植物の代表格のウツボカズラが堂々の1位。矢を入れる靫(うつぼ)に姿が似ていることから和名をウツボカズラといいます。マレーシアやインドネシアなど熱帯アジアに幅広く分布し、これまでに100種以上が確認されています。園芸用にも人気で春から夏にかけてホームセンターや園芸店でも販売されます。
ウツボカズラは袋のふたの内側にある蜜腺から出す物質で虫を引き寄せ、筒状になった捕虫葉に落として捕食する「落とし込み式」の食虫植物です。袋の底に溜まった液体には消化酵素が混じっており、捕らえた虫を分解し、養分を吸収する仕組みです。

2位
ハエトリソウ

ダーウィンが熱心に研究に取り組み、「世界で最も不思議な植物」と呼んで、この葉が閉じる仕組みについて研究を重ねたと言われるハエトリソウ。実際に動いている虫を捕獲する、「これぞ食虫植物!」という存在で、一般に最も知られています。
奇妙な見た目からアマゾンや東南アジアの熱帯に自生しているというイメージが強いのですが、意外にもアメリカのノースカロライナ州とサウスカロライナ州の海岸平野にのみ分布しています。
ハエトリソウは二枚貝を割ったような2片になっていて、葉の内面には1片ごとに3本ずつの感覚毛と呼ばれるセンサーがあり、これに虫が2回触れると、約0.5秒の速さで葉が閉じる「閉じ込み式」の食虫植物。1週間ほどで捕らえた虫の養分を取り終えると、また葉を開きます。
このセンサーは虫以外のものが触れても閉じますが、消化液はタンパク質に反応して出るため、タンパク質以外のものを挟んだ場合、葉を開いて排出しようとするという、よくできたメカニズムを持っています。

3位
ヘリアンフォラ

ヘリアンフォラは断崖絶壁に囲まれたギアナ高地固有の食虫植物。1年中冷涼(10℃~25℃)で雨も多く霧に囲まれたなかで生育しています。自生地は未開のところが多く今後も新種が発見される可能性が充分ある種類と言われています。
ウツボカズラと同様に「落とし穴式」の食虫植物で、筒状になった葉の底に獲物を落として養分を吸収します。葉の先端にあるのが蜜腺で、そこから分泌される蜜によって、獲物がおびき寄せられます。ふたがないので雨水がどんどん流れ込みますが、葉の接合部から過剰な水が排水されるようになっています。

4位
フクロユキノシタ

フクロユキノシタはオーストラリア西南部にのみ自生する1科1属1種の珍しい食虫植物です。ウツボカズラやヘリアンフォラと同様に捕虫葉は袋状で、「落とし穴式」で昆虫などを捕らえます。袋の底では消化酵素を出して獲物を消化します。
袋の入り口付近の内壁にはたくさんの蜜腺があり、そこから蜜を出して虫を誘引します。また、袋の入り口には内側に向かって鋭いとげもあり、一度落ちたら這い上がっても抜け出ることは不可能でしょう。

5位
サラセニア

カナダ南東部から北アメリカ東部、南部に8種が分布します。なかが空洞になった筒状の捕虫葉が多数あり、そこに落ち込んだ虫が消化される「落とし穴式」の食虫植物です。茎が極端に短く這うように伸びるので、捕虫葉が地面に直立して並んでいるように見えます。
捕虫葉の大きさや形、色は種によりさまざまで、小さなものでは10cm、大きなものは1mを超します。フタの部分はとくにカラフルで、網目状であったり斑点模様であったり、色も変化に富んでいます。捕虫葉のほかに、剣葉と呼ばれる平べったい葉が生えることもあります。

6位
モウセンゴケ

世界中に200種類以上が知られる食虫植物のなかでは珍しく日本にも数種類が分布している食虫植物です。主に湿地帯に自生していて日本では尾瀬や北海道などに自生します。
葉の表面に腺毛(せんもう)と呼ばれる毛がびっしりと生えていて、腺毛の先からねばねばした粘液を出して、虫を捕らえる「粘着式」の食虫植物です。捕らえた虫は葉や腺毛で内側に巻き込みます。粘液からは消化酵素も分泌され、消化された虫は腺毛から吸収されて栄養になります。

7位
ミミカキグサ

ミミカキグサは200以上の種類が知られており、食虫植物としては最も多く、全世界に分布しています。
捕虫葉は地中または水中にあり、根茎などに捕虫嚢(ほちゅうのう)と呼ばれる小さな袋をつけ、虫がなかに入り込むとフタを閉じて捕まえる、「吸い込み式」の食虫植物です。この捕虫器官は肉眼ではその動きを確認できないほど小さいです。
また、小さくてかわいらしい花を咲かせるので、最近では園芸店でも販売されることがあります。

8位
ムシトリスミレ

ムシトリスミレは、モウセンゴケと同様に葉の表面から消化酵素を含む粘液を出し、その粘着力で獲物を捕らえて消化吸収する「粘着式」の食虫植物です。スミレに似た綺麗な花を咲かせ、世界中に分布しています。日本では北は北海道の大雪山(たいせつざん)から、南は四国の石立山(いしだてやま)までの高山地帯に広く分布しています。
基本的に葉で捕虫しますが、花茎にも無数の粘液をつけており、ここでも虫を捕まえることができます。虫を捕らえると葉で巻き込むような動きをしますが、これは分泌された消化液が流出しないようにするためだそうです。

9位
ダーリングトニア

カリフォルニア州とオレゴン州の山地で、蛇紋岩(じゃもんがん)質土壌の表面に冷水が流れている場所に自生しています。ウツボカズラやサラセニアなどと同様に「落とし穴式」の食虫植物で、筒状になった捕虫葉に獲物を誘い込んで消化吸収します。
捕虫葉の内側は滑りやすくなっており、一度入ってしまった昆虫が脱出するのは困難な構造になっています。幼苗のときには小型の捕虫葉をつけていますが、これは立ちあがることなく地上に這うように伸びます。そのためその捕虫葉は地上を歩くアリなどを捕らえます。

10位
ロリヅラ

南アフリカ南部に「Roridula dentata」と「Roridula gorgonias」の2種類が自生しています。小低木で、葉は細長く、表面に密生した毛から粘液を分泌して捕食する「粘着式」の食虫植物です。
非常に強い粘着力をもち、その粘着力は植物が枯れたあとも持続することから、原住民はロリヅラを束ねてハエ取り紙代わりにしているという報告があります。
消化酵素を分泌せずに細菌の助けを借りて獲物を分解します。葉から栄養分を吸収できないようで、葉で捕らえた虫の死骸を株の根元に蓄積し、それらの分解栄養素を根から吸収しています。
取材協力・写真提供:山田食虫植物農園
Y's Exotics(山田食虫植物農園)
食虫植物の販売(通販)・輸入代行業者。取り扱いの食虫植物は日本最多で、食虫植物以外にもアリ植物、ビカクシダ、チランジアなどの珍しい植物を取り扱っている。
HP
http://ys-exotics.com/
住所
広島県広島市安佐南区高取北2-6-17
E-mail
greengrass.ohara@gmail.com
電話
082-569-5844