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【東日本大震災から7年】
災害をいまに伝える『ホテル観洋』の“語り部バス”

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2018/03/11 07:45 ウェザーニュース

「高台に避難してください!」という防災無線で呼びかけ続けた女性職員が津波に飲み込まれ、鉄骨だけが残った…。

宮城県南三陸町の「防災対策庁舎」。当時、人口約1万7000人のうち、死者・行方不明者832人、町内の建物の約7割が流出しました。

被災しながら被災者を受け入れ

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震災当時、被災者を受け入れた時のロビー
南三陸町の『ホテル観洋』も太平洋を臨む高台に位置していましたが、2階まで津波が襲いました。被災しながらも被災者をホテルに受け入れ、衣食住を提供し続けました。あの日から7年、『ホテル観洋』は、注目すべき復興の取り組みを行っていました。

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被災者をお客さんとしてもてなした
震災直後、女将の阿部憲子さんは「1週間は籠城になるかもしれない」と1週間分の献立を作り、風呂や水道の使い方など「水のルール」を作り、被災者をお客さんとしてもてなしました。

震災直後からは避難所として約600人以上の被災者を受け入れ、それは180日に及びました。

「ジャパン・ツーリズム・アワード」大賞受賞!

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語り部バス
昨年(2017年)『ホテル観洋』が、「震災を風化させないための語り部バス」による地域交流活性化で、第3回「ジャパン・ツーリズム・アワード」の大賞を受賞しました。日本政府観光局と旅行業界が優れた取り組みに対して授与する賞です。

受賞理由は、2011年3月の東日本大震災直後から、宿泊施設を被災者に提供し、同時に「語り部バス」を催行して震災体験を宿泊客に伝え、震災を風化させない取組みが高く評価されたからです。

「震災を風化させないための語り部バス」とは?

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南三陸町防災対策庁舎。「語り部バス」では大震災の跡をめぐる
ホテル観洋の伊藤俊さんによると、
「『語り部バス』は毎日、運行しています(午前8時45分発/約60分のコース/参加費用500円/1人でも催行)。『語り部バス』は、震災の記憶の風化防止だけが目的ではありません。」

「地域の活性化やにぎわい、交流を取り戻し、観光振興につながるように企画されたものです。これからも長く続けて参ります」

「語り部バス」は、南三陸町内の被災跡を回り、発災時で針が止まったままの時計、津波が到達した高さがわかる施設、南三陸町防災対策庁舎、高野会館(民間所有の震災遺構)などを60分でめぐるコース。

ガイドの案内と解説が未曽有の災害をいまに伝えてくれます。「語り部バス・オプションコース」も用意されています。修学旅行や団体の申し込みもあり、多いときはバスが何台も連なることがあるといいます。

未来へつなぐために

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太平洋にのぼる朝日。ホテル観洋から見られる
女将の阿部憲子さんは、「語り部活動は国や世代を超えて地域の歴史や文化を未来へ伝え、多くの方々が現地を訪れるキッカケとなっています。大賞受賞の栄誉を胸に震災復興だけでなく、観光振興や地方創生につなげて地域の発展に努めて参ります」

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女将の阿部憲子さん
「語り部バス」によって新たな震災伝承と教訓が生まれていくことでしょう。「ホテル観洋」は、大海原と空に面した絶好のロケーション。被災地の明日を応援したいものです。
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