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2016年、自然災害10大ニュース

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2016/12/15 13:30 ウェザーニュース

地震、台風、噴火、暴風雪など、振り返ってみると今年も数々の災害がありました。被害状況などの深刻度をもとに「自然災害10大ニュース」を選びましたが、改めて日本は自然災害の多い国だと気づかされます。しかし、災害は防げなくても、被害を軽減することはできます。
※こちらの記事はウェザーニュースの月刊デジタルマガジン「月刊SORA」に掲載中の記事を一部編集してご紹介しています。

1:終わらない熊本地震

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深刻な被害を受けた熊本城
熊本地方を震源とするM6.5の地震が発生したのは4月14日21時26分、熊本県益城町(ましきまち)で最大震度7を記録。その28時間後の4月16日1時25分には同じく熊本地方を震源とするM7.3の地震が発生した。
活断層型地震でM6.5の地震の後、さらに大きな地震が発生するのは、地震の観測が開始された1885年以降で初めてのこと。また震度7が2回観測されるのも、1996年に現在の震度計で観測するようになって初めてだった。

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熊本県益城町を震度7の地震が2回襲った
さらに余震の規模と長期化も異例だった。8月まで震度5弱クラスの余震が散発し、11月時点でも震度3クラスの余震が続いている。
建物被害は住宅の全壊が約8000棟、半壊が約3万棟、一部損壊が約14万棟におよんだほか、熊本城は石垣が崩れ、天守閣なども損壊した。人的被害は直接死が50人、関連死95人の計131人(11月14日現在)にのぼった。地震の長期化=避難生活の長期化が関連死を増加させたとみられる。
内閣府は5月に九州全域の被害総額が約2.4〜4.6兆円と試算したが、熊本県は9月になって県内だけで被害額が3兆7850億円にのぼることを明らかにした。

2:迷走台風10号、岩手県などで死者

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岩泉町の高齢者施設では9人が犠牲に(写真:時事)
8月15日頃に北太平洋のウェーク島付近で発生した低気圧は16日21時(日本時間)に熱帯低気圧に発達。北西に進んだあと八丈島付近で西南西に進路を変え、21日21時に四国沖で台風になった。
進路は複雑になり、南下すると海面水温が高い海域で発達。そこでしばらく停滞し、26日に北上に転じたときには最低気圧940hPaを記録し、大型で非常に強い台風となった。南下してから北上するという過去に例のない進路をたどったのだ。

さらに異例なのは、30日18時頃に岩手県大船渡市付近に上陸したことだった。東北の太平洋側に上陸するのは、1951年に統計を取り始めて以来初めてだった。
岩手県では29日から30日にかけて沿岸を中心に雨が降り続き、30日夕方から夜にかけて豪雨となった岩泉町(いわいずみちょう)では1時間雨量が70.5mm、3時間雨量が138.0mmとなり、統計開始以来最高を記録した。

その岩泉町では、高齢者施設の近くを流れる小本川(おもとがわ)が氾濫し、施設内に水が流れ込み、入居者9人全員が亡くなった。久慈(くじ)市では久慈川と長内川(おさないがわ)も氾濫し、2つの川に挟まれた広範囲が浸水。台風が上陸した大船渡市では全域(約1万5000世帯、約3万8000人)に避難勧告が出された。岩手県では死者・行方不明者が23人になった。

8月17日から23日の1週間で3つの台風が上陸した北海道でも南富良野市の空知川(そらちがわ)の堤防が決壊するなど水害は広範におよび、死者・行方不明者は4人、農業に多大な被害を出した。

3:北海道に台風上陸3連発

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北海道は異例の台風に甚大な被害を受けた。8月17日に台風7号が襟裳岬(えりもみさき)付近に上陸、21日に台風11号が釧路市付近に上陸、23日には台風9号が日高地方に上陸し、十勝地方・日高地方・オホーツク地方など広範囲に被害をもたらした。
北海道に台風が上陸したのは9年ぶりだが、1年間に3つの台風が上陸したのは観測史上初めて。1週間で3つの台風が上陸したのに加え、台風10号が8月29日〜31日にかけて接近し、暴風と豪雨による各地の川の氾濫、橋の流失が相次ぎ、JRや道路など交通網が壊滅的打撃を受けた。

JR北海道の各線では路盤流出、橋梁流失、土砂流入、盛土崩壊、倒木などで道東を中心に路線網が寸断された。JR貨物も農産物などを積載した道外向けコンテナ(5t)約2500個が滞留した。
十勝地方に通じる各国道が橋梁流失や路盤流出で通行止めとなり、一時は十勝地方が孤立状態となった。
川の氾濫などで被害を受けた農地は2万4400haにおよび、道東地方で収穫期を迎えていたタマネギやジャガイモ、冷夏で収穫が遅れていた十勝小豆などの農作物が被害を受けた。無事に収穫できた農作物も交通網の混乱の影響で出荷できず、全国的にタマネギなどの値上がりが続いた。
北海道と国土交通省の集計では、一連の台風によるインフラや農業などの被害総額が2786億円にのぼった。

4:梅雨前線、九州で記録的大雨

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6月19日から25日にかけて本州付近に梅雨前線が停滞し、その前線上を低気圧が次々に通過した。梅雨前線は一時南下したが、27日から再び本州付近に北上して、30日まで九州を中心に西日本各地に記録的大雨をもたらした。
19〜30日の降水量は九州の広い範囲で500mmを超え、宮崎県えびの市で1210.5mm、熊本県南阿蘇村で1053.5mmなど1000mmを超えるところもあった。また、熊本県甲佐町(こうさまち)では1時間降水量が150mmに達した。

この大雨のため各地で土砂災害、浸水害などが発生し、熊本県で死者6人、福岡県では行方不明者1人の人的被害が出た。また、住宅被害、停電、断水、電話の不通、鉄道の運休も発生した。熊本地震が収束しないなか、大雨が九州に追い打ちをかけたかっこうだ。

日本の自然災害リスクは世界17位

国連大学が世界171ヵ国を対象に自然災害に見舞われる可能性や対処能力を評価した「世界リスク報告書2016年版」によると、日本は総合順位で17位だった。
地震、台風、洪水、干ばつ、海面上昇の5種類の自然災害について28項目の指標を設けて評価した。順位が高いほど災害に弱いとされ、1位は南太平洋の島国バヌアツ、2位はトンガ、3位はフィリピン、4位はグアテマラ、5位はバングラデシュなどの発展途上国だった。

日本は自然災害に見舞われる可能性では4位だったが、インフラ整備や対処能力、適応能力などが評価されて17位になった。先進国では米国が127位、カナダが145位、英国は131位、フランスが152位などで、日本は際立って高かった。

国連大学によると、2015年に世界中で346件の自然災害が発生し、約1億人が被災し、2万2000人以上が死亡し、665億ドル(7兆円)の経済的損失があったという。
昨年の自然災害による経済的損失をみると、熊本地震の被害額(2.4〜4.6兆円)は世界の損失額の約半分を占める。2011年の東日本大震災による被害総額(内閣府は16兆9000億円と推計)は世界の損失額の2年分を超える。日本がいかに自然災害大国かがわかる。

自然災害は避けられないが、少しでも人的被害、物的被害を軽減する「減災」が重要な時代を迎えているのである。
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